Gross Risk

### 概要 グロスリスク（Gross Risk）とは、企業やポートフォリオが抱えるリスクの大きさを評価・測定する際に、そのリスクを軽減・相殺するために取られているヘッジ取引、保険、担保、ネッティング契約などのリスク軽減策の効果を**考慮に入れる前**の、本来のエクスポージャー（リスクに晒されている度合い）や潜在的な損失額の総量を指します。「粗リスク」と訳されることもあります。 ### ネットリスクとの対比 グロスリスクは、リスク軽減策の効果を差し引いた後の「ネットリスク（Net Risk、純リスク）」と対比される概念です。 - グロスリスク: リスク軽減策考慮前のリスク総量。 - ネットリスク: リスク軽減策の効果を反映した実質的な残存リスク量。 （例: グロスエクスポージャー vs ネットエクスポージャー、グロスVaR vs ネットVaR） ### 意味合いと利用 - **本来のリスク規模の把握:** ヘッジ等の効果を除くことで、組織が本来直面しているリスクの全体像や最大規模を把握します。 - **リスク管理:** グロスベースでのリスク限度額（リミット）を設定し、過度なポジション集中やレバレッジを抑制するために用いられることがあります。また、ヘッジ効果評価の際にグロスとネットを比較します。 - **規制:** 金融規制などで、グロスベースのエクスポージャーを用いる場合があります。 - **カウンターパーティリスク:** ネッティング契約が無効な場合の潜在リスク評価で考慮されることがあります。 ### 例 - ある通貨に対し100万ドルの買いと80万ドルの売りポジションを持つ場合：グロスエクスポージャーは180万ドル、ネットエクスポージャーは20万ドルの買い越し。 - 10億円の市場リスクに対し8億円分をヘッジした場合：グロスリスクは10億円、ネットリスクは2億円。 グロスリスクとネットリスクの両方を把握・管理することが、リスクの実態を正確に理解する上で大切です。